ホーナー、ニューウェイのアストンマーティンでの苦戦は「歴史の繰り返し」 レッドブル初年度のギアボックスは「約4周で壊れた」
レッドブル・レーシングの元チーム代表クリスチャン・ホーナーが、2026年10月16日付の英Autosportの取材に答えた。エイドリアン・ニューウェイが2006年にレッドブルへ加わった当時を振り返り、初年度の2007年に求められたシームレスシフト・ギアボックスは「壊れるまでに約4周しか走れなかった」と明かした。
ホンダのパワーユニット(PU)とワークス契約を結んだアストンマーティンは、ニューウェイをチーム代表に据えた2026年、コンストラクターズ10位(7点)と低迷している。ホーナーは現状を外から見て「歴史が繰り返されているように感じる」と述べ、天才設計者の要求に組織の準備が追いついていない構図は19年前と同じだという見方を示した。
「約4周で壊れた」シームレスシフト・ギアボックス
Autosportによると、ホーナーはニューウェイ加入当時のレッドブルを「組織として準備不足で、未熟すぎた」と表現した。ニューウェイが求めるものを形にする力が、チームになかったという。「我々のツールは十分に洗練されておらず、製造工程も十分に進んでいなかった」とも語った。
その象徴として挙げたのが、変速時の駆動力の途切れを抑えるシームレスシフト・ギアボックスだ。ホーナーは「彼は1年目からシームレスシフトのギアボックスを求めた。1周あたりコンマ数秒を稼げるからだ。でも、我々は壊れるまでに約4周しか走れなかった!」と振り返った。当時のチームにはギアボックス用のダイナモ(試験台)がなく、必要な試験リグの多くもそろっていなかったという。
「最初の2007年は、彼を受け入れる準備ができていなかった」とホーナーは続けた。マシンには信頼性、サスペンション、ギアボックス、電装系の問題が次々と出た。その理由を「単に、彼が求めるものに妥協しなかったからだ」と説明している。
「ニューウェイが合わせるべき」――旧ジャガー勢の反発
レッドブルの母体は、2005年に買収した旧ジャガー・レーシングだ。ホーナーによると、ニューウェイを口説いて迎えた際には社内に反発があり、旧ジャガーの古参の間には「エイドリアンが我々のやり方に合わせるべきだ」という空気があった。
ホーナーの考えは逆だった。「いや、君たちが彼のやり方に合わせるんだ、と思った。私に言わせれば、エイドリアンは当時100勝以上を挙げていて、ジャガーは1勝もしていなかった」。そのうえで技術部門の層を厚くしたが、旧ジャガー側からすれば「エイドリアンは月から来たようなものだった」という。
MotorBiscuitが伝えたAutosportの動画インタビューによると、マクラーレンからニューウェイについてきたのはピーター・プロドロモウだけだった。その後、マーク・スミス、ジェフ・ウィリス、とりわけロブ・マーシャルらが加わり、ジョナサン・ウィートリーも迎えた。組織をニューウェイの流儀に合わせて作り直したこの体制が、のちにセバスチャン・ベッテルとマックス・フェルスタッペンのタイトル獲得を支えることになる。
ジョーダン時代のツールが残っていたアストンマーティン
ホーナーは現在のアストンマーティンについて「彼は慣れたやり方で仕事を進めるためにアストンへ行った。だが、チームは明らかにその準備も態勢も整っていなかった」と語った。この見立ては、ニューウェイ自身の説明とも重なる。
F1公式サイトが6月30日に伝えたところでは、ニューウェイはチームに古いツールや工程が残っていたと認めた。「一部はシルバーストンにあったジョーダン・チームのごく初期までさかのぼれる」という。その結果、「部品が適切なタイミングで発注されていなかった」。さらに、「このチームでは歴史的に、エンジニアリング用のシミュレーションツールへの投資が十分ではなかった」とも述べている。
2026年型車AMR26は開発の着手が遅れ、風洞試験も遅れた。ニューウェイは「急いで設計すると、真っ先に犠牲になるのは重量だ」と語り、車重超過の一因にホンダと取り組んだ振動対策を挙げた。F1公式によると、チームはフロアやギアボックスケーシングなどの製造を外注から社内に切り替えている。
初の自社製ギアボックスとホンダPU――重なる構図
ホーナーの「4周」の逸話と重なるのが、アストンマーティンのギアボックスだ。motorsport.com日本版のメカ解説によると、昨年までのチームはメルセデスのPUに合わせてギアボックスとリヤサスペンションも購入していた。ホンダとのワークス契約でこれらを自前で用意する必要が生じたが、チームにはギアボックスを開発する部署すらなかったという。
同記事によると、AMR26の自社製ギアボックスは初期不良が多発し、変速が遅れたり、逆に急すぎたりする症状が目立った。The Raceは、アストンマーティンが自社製ギアボックスを開発するのは2008年以来だと伝えている。5月のマイアミGPの予選では、フェルナンド・アロンソがギアボックスの挙動に苦しみ、カナダGPに向けた最優先の改善項目となった。
解決には、ホンダの拠点も使われた。The Raceによると、AMR26の実車をHRC Sakura(栃木県さくら市)に残して振動の原因を調べ、シャシーとPUの両面の対策で振動はほぼ収まった。アロンソは振動について「なくなった。なくなったと言っていい」と語っている。motorsport.com日本版によると、ギアボックスもSakuraのテストベンチでエンジンとともに検証され、電子制御の調整が進められた。
| 項目 | レッドブル(2006〜2007年) | アストンマーティン(2025〜2026年) |
|---|---|---|
| 母体 | 旧ジャガー・レーシング | ジョーダンの流れをくむチーム |
| ニューウェイの立場 | 技術部門の責任者(代表はホーナー) | 2026年からチーム代表 |
| 指摘された不足 | ギアボックス用ダイナモや試験リグ | 古いツールと工程、シミュレーションツール |
| ギアボックスの課題 | シームレスシフトが約4周で壊れた | 2008年以来の自社製で初期不良 |
| PU | ルノー(カスタマー供給) | ホンダ(ワークス契約) |
2つの時期を並べると、要求の高さに設備と工程が追いつかないという課題が共通しているとみられる。一方、2007年はホーナーが代表として組織の作り替えを担ったのに対し、現在はニューウェイ自身がチーム代表として改革を率いている点が異なる。
自伝『Drive』と、残るシーズンの課題
アストンマーティンは2025年まで、アンディ・コーウェルがCEO兼チーム代表を務めていた。PlanetF1によると、2025年シーズン末にニューウェイが代表を引き継ぎ、コーウェルは最高戦略責任者に移った。その間、ESPNは2025年11月、ホーナーが首脳候補の一人に挙がっていると報じていた。
ホーナーの自伝『Drive』は10月22日に発売される。Autosportによると、ホーナーは同書でニューウェイのレッドブル離脱にも触れており、離脱を人づてに知って失望したという。今回の「歴史の繰り返し」発言は、その刊行を前にしたものだ。
成績面では、Autosportによると、8月のハンガリーGPでの大型改良後、アロンソがザントフォールトとセパンで入賞した。それでもシンガポールGP終了時点の7点はすべてアロンソによるもので、ランス・ストロールは無得点のまま。最下位のキャデラック(0点)との差はわずかだ。次戦アメリカGPでは、ハンガリーで刷新した空力と、ホンダとともに磨いてきた自社製ギアボックスで、どこまで入賞争いに加われるかが焦点となる。
詳しくは元記事をご確認ください。
出典:Autosport(英国・英語) 2026-10-16 Why Horner sees history repeating itself for Newey at Aston Martin
出典:Motorsport Week(英国・英語) 2026-10-16 Christian Horner delivers Adrian Newey deja vu theory amid Aston Martin struggles
参考:Formula1.com(英国・英語) 2026-06-30 5 of the biggest revelations as Newey breaks down Aston Martin's season so far
参考:The Race(英国・英語) 2026-05-06 Why F1's slowest car has a new urgent problem to fix
参考:motorsport.com日本版 2026-05-20 F1メカ解説|アストンマーティンの今季苦戦は、やはりギヤボックスも一因か……初の自社製で苦労。ホンダSakuraのテストベンチも活きた?
参考:MotorBiscuit(米国・英語) 2026-10-16 Horner Feels Aston Martin Not Equipped for Newey as He Recalls Red Bull Pushback
参考:PlanetF1(英国・英語) 2026-02-10 Andy Cowell to leave Aston Martin
参考:ESPN(米国・英語) 2025-11-23 Christian Horner, Aston Martin: Adrian Newey relationship no hurdle – sources
参考:Crash.net(英国・英語) 2026-10-11 New F1 championship standings after Singapore Grand Prix
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